フィトンチッド基礎講座 (2)

多種多様なフィトンチッド



 フィトンチッドは、森林浴効果をもたらす森林や木の香りとして紹介されることが多
いので、一般的に次のように考えられているようです。

フィトンチッド=森林浴=森林の空気=木の香り=揮発性成分=テルペン類

 しかし、木の香り? ハーブ? 漢方薬?の項で説明したように、揮発性物質だけが
フィトンチッドではないのです。また、樹木だけにも限りません。香草や薬草、ハーブ
や漢方薬などの成分もフィトンチッドの一種であると考えられます。

 したがって、広範囲な捉え方をした場合、フィトンチッドとは植物が二次的に作りだ
すさまざまな化学成分であり、他の生物の生活や行動に何らかの影響を与えるもの
と言えるでしょう。

 つまり、フィトンチッドとは『生物活性を有する植物の二次代謝成分』の総称であり、
その種類は多岐にわたり、その働きも実に多様なのです。

 以上をまとめてみると次の図のようになります。


フィトンチッド、植物の二次代謝成分、生物活性物質

生物活性物質としてのフィトンチッド



 少し乱暴なたとえかもしれませんが、『お酒』を例にとって考えてみましょう。

 居酒屋さんなどで『お酒ください』と頼めば、おそらく『お燗しますか』と訊ねられると
思います。この場合の『お酒』とは『日本酒』を意味しています。
 ところが、ビール、ワイン、焼酎、ウィスキー、ブランデー、なども当然ながら『お酒』
です。この場合の『お酒』は『酒類』を意味しているわけです。
 お酒はその製造方法によって大きく3分類されます。ワイン、ビール、日本酒などの
『発酵酒(醸造酒)』、ウィスキー、ブランデー、焼酎、ウオッカなどの『蒸留酒』、梅酒
やリキュールなどの『合成酒(混成酒)』です。日本酒は発酵酒の一つに過ぎません。
 つまり、『お酒』という言葉は広義には『酒類の総称』のことであり、狭義には慣用的
に『日本酒』を意味するわけです。

 同じように、フィトンチッドという言葉は、『植物が二次的に代謝する生物活性物質
の総称』であり、狭義には『樹木が発散する揮発性物質(テルペン類)』を意味してい
るわけです。


* 参考文献

  • 『フィトンチッドと森林浴』 谷田貝 光克 (著) 林業科学技術振興所 1985年
  • 『森林の不思議』 谷田貝 光克 (著) 現代書林 1995年
  • 『植物の不思議な力=フィトンチッド』
    B.P.トーキン、神山 恵三 (著) 講談社(講談社ブルーバックスB-424) 1980年
  • 『森はレモンの香り』 善本 知孝 (著) 文一総合出版 1990年
  • 『森の香り』 宮崎 良文 (著) フレグランスジャーナル社 1996年
  • 『植物の生理活性物質』 山下 恭平 (著) 南江堂(化学の領域選書10) 1975年
  • 『高等植物の二次代謝』 吉田 精一、南川 隆雄 (著) 東京大学出版会 1978年
  • 『生物活性天然物の化学合成』 森 謙治 (著) 裳華房 1995年


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