フィトンチッド基礎講座 (4)

精油として利用されるフィトンチッド



 フィトンチッドはどのような形で利用されているのでしょうか。

 生活の智恵に見るフィトンチッドの項で説明したように、先人たちはフィトンチッドが
持つ効用をさまざまな形で活用してきました。

 たとえば、木の葉でたべものを包んだり、薬草や漢方薬のように煮だして飲んだり
香辛料として使ったり、というのは古くから伝わる身近な利用方法でした。
 いわゆる『民間伝承薬』と呼ばれるものがその一例です。昔から、『薬』としての働き
を持つ植物が、その効能と共に経験的に知られていて、『薬草』や『薬用樹木』として
広く使われてきたのです。( 主な薬用樹木とその効能をご参考ください。)

 住まいや家財道具などに木材を使うことも、ある意味でフィトンチッドを利用している
と言えるでしょう。また、『森林浴』も立派な利用方法です。最近では森林の保健休養
機能が再認識されています。

 これらの他に、植物から『精油』を抽出する形でも活発に利用されています。

 採り出された精油は、食品に使われる香料を始めとして、芳香剤、入浴剤、石鹸、
化粧品、育毛剤、口腔内消毒剤などの生活雑貨品もしくは医薬部外品として用いら
れる他に、消臭剤や酸化防止剤としても使われています。また、消炎剤、去痰剤、
健胃整腸剤などの医薬品の原料としての利用も進められています。
 このように、精油は幅広い用途を持っているのです。

 精油は、植物の葉、花、根、材などの部分から採り出すのですが、なにしろ天然物
ですから、わずかしか得られません。『微量成分』と呼ばれることからわかるように、
もともとの含有量が少ないのです。たとえば、バラの精油一滴を採るためには、バラ
の花が60個以上も必要と言われるほどに貴重なものなのです。

 樹木の場合、一般的に精油は葉に多く含まれています。精油を含む量は、樹種に
よって異なります。下表をご覧いただくとわかるように、トドマツ、スギ、ヒノキ、ヒバ、
といった樹木に精油が多く含まれています。いっぽう、雑木林などでよく見かける、
クヌギ、シイ、カシにはほとんど含まれていません。
 一般的に、針葉樹のほうが精油を含む量が多いと言えるでしょう。



主な国産針葉樹の葉油含量

樹 種

精油含量

樹 種

精油含量

●ヒノキ科

●マツ科

ネズコ

4.2

トドマツ

8.0

ヒノキ

4.0

エゾマツ

2.1

ニオイヒバ

4.0

シラベ

2.1

アスナロ

2.4

ハイマツ

2.0

チャボヒバ

1.7

アカエゾマツ

1.4

ハイビャクシン

1.7

トウヒ

1.1

サワラ

1.4

モミ

0.9

ヒノキアスナロ

1.4

ツガ

0.8

ネズミサシ

1.3

ストローブマツ

0.6

カイヅカイブキ

0.9

アオトウヒ

0.4

オキナワハイネズ

0.7

ヒマラヤスギ

0.3

エンピツジャクシン

0.5

カラマツ

0.3

●イチョウ科

ダイオウショウ

0.3

イチョウ

0.4

イヌカラマツ

0.3

●イヌマキ科

アカマツ

0.2

イヌマキ

0.1

●イチイ科

●スギ科

カヤ

0.7

スギ

3.1

キャラボク

0.2

コウヤマキ

0.7

イチイ

0.1

コウヨウザン

0.4

* 乾葉100g当りの精油含量(ml)


*
『森林の不思議』 谷田貝 光克 著 (現代書林 1995年) より引用(転載)





主な国産広葉樹の葉油含量

樹 種

精油含量

樹 種

精油含量

●クスノキ科

●ユキノシタ科

クスノキ

2.4

ノリウツギ

0.1

タブノキ

2.2

●ミカン科

ヤブニッケイ

2.0

ミヤマシキミ

2.4

シロダモ

0.4

サンショウ

0.6

シロモジ

0.4

●ブナ科

●シキミ科

クヌギ

〜0

シキミ

4.4

シラカシ

〜0

●ツツジ科

スダジイ

〜0

アセビ

0.1

* 乾葉100g当りの精油含量(ml)


*
『森林の不思議』 谷田貝 光克 著 (現代書林 1995年) より引用(転載)




 上の表は樹木の『葉』に含まれる精油の量ですが、『材』の精油含量は、ほとんどの
樹種において1%前後と少量です。
 材油含量については、主要樹種の精油成分(葉油および材油)をご参考ください。


* 参考文献

  • 『フィトンチッドと森林浴』 谷田貝 光克 (著) 林業科学技術振興所 1985年
  • 『森林の不思議』 谷田貝 光克 (著) 現代書林 1995年
  • 『植物の不思議な力=フィトンチッド』
    B.P.トーキン、神山 恵三 (著) 講談社(講談社ブルーバックスB-424) 1980年
  • 『森はレモンの香り』 善本 知孝 (著) 文一総合出版 1990年
  • 『森の香り』 宮崎 良文 (著) フレグランスジャーナル社 1996年
  • 『香辛料の民俗学』 吉田 よし子 (著) 中央公論社(中公新書882) 1988年
  • 『樹木がはぐくんだ食文化』 渡辺 弘之 (著) 研成社 1996年
  • 『精油の利用』 大平 辰朗
    日本木材学会第6期研究分科会報告書 V 69〜73頁 日本木材学会 1999年


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