『必須VOCsリスト』におけるテルペン類



 厚生労働省(旧厚生省)の「シックハウス(室内空気汚染)問題に関する検討会」の
第5回会合が平成12年(2000年)12月15日に開かれ『中間報告書−第4回〜第5回
のまとめ』がとりまとめられました。(座長は前北里大学客員教授の林 裕造氏)

 そして、報告書の内容が同年12月22日に旧厚生省より報道発表されました。

 この報告書の『総揮発性有機化合物(TVOC:Total Volatile Organic Compounds)の
空気質指針値策定の考え方について』という項目内に『必須VOCsリスト』があり、
シックハウス(室内空気汚染)の原因と考えられる化学物質が挙げられているのです
が、その中にテルペン類も含められています。

 テルペン類はフィトンチッドの代表的な有機化合物です。したがって、VOCsリストに
テルペン類が掲載されたということは、『フィトンチッドはシックハウス(室内空気汚染)
を引き起こす有害化学物質である』ということになってしまいます。

 もちろん、フィトンチッドの有害性について でもお話しした通り、フィトンチッドが万能
なわけではありませんし、なにごともその功罪を正しく認識することは重要です。

 しかし、シックハウス(室内空気汚染)の原因物質にフィトンチッドが加えられている
ことには、大きな疑問が生じます。

 なぜなら、当サイトでも紹介しているように、フィトンチッドにはリフレッシュ作用があ
り、人体に有益な物質です。そればかりではありません。フィトンチッドは有害化学物
質を除去する働きを持っていることが最近の研究によって実証されているのです。

 つまり、フィトンチッドは、高い環境浄化能力を持っており、シックハウス(室内空気
汚染)に対しても有効な物質なのです。それが逆に『原因物質』とされるのは矛盾し
ているのではないでしょうか。

 もちろん、フィトンチッドが有害化学物質と完全に証明されたわけではありません。
報告書の中でも『毒性学的知見に基づいたTVOC指針値設定は現時点では困難で
はある』旨記載されています。

 しかし、必須VOCsリストにテルペン類が入っているとお聞きになると『フィトンチッド
は有害物質だったのか』と誤解される方も多いのではないかと思います。

 そこで、無用な誤解を避けるためにも、この報告書の内容について紹介し、検討を
加えてみましょう。






 シックハウス(室内空気汚染)とは?


 まず最初に、シックハウス(室内空気汚染)について簡単に説明します。

 シックハウスとは、直訳すれば『病気の家』です。この言葉は典型的な和製英語で、
 これだけでは何を意味するのかわかりませんね。検討会の名称でもシックハウスの
 後にわざわざ括弧書きで『室内空気汚染』と説明していることからもわかるように、
 シックハウスとは、『室内の空気が汚染され、その結果健康を阻害すること』です。

 そして、室内空気汚染による健康阻害は『シックハウス症候群』と呼ばれています。

 ちなみに、わが国では『シックハウス(症候群)』という言葉が一般的に使われてい
 ますが、WHO(World Health Organization 世界保健機関)では『シックビルディング
 症候群』の名称が用いられています。

 さて、シックハウス症候群の具体的な症状としては、何らかの病気に罹っているわ
 けでもないのに、頭痛やめまいがする、咳が出たりのどが痛む、鼻血が出る、など
 が挙げられます。当初はこれらの症状の原因がわからなかったわけですが、研究
 が進むにつれ、空気汚染が引き起こす疾病であることが明らかになったのです。

 汚染の原因は、空気中に浮遊するさまざまな物質によるものと考えられています。
 小さなゴミ(ホコリやチリ)を始め、カビ、ダニ、細菌、アスベスト(石綿)の粉じん、
 揮発性の有機化合物、などが原因物質として挙げられます。

 しかし、近年になって合成された有機化合物は別として、ホコリ、カビ、ダニ、細菌
 などが空気中に浮遊することは、今に始まったことではありません。

 空気汚染による健康阻害が問題となってきた背景には、石油ショックを契機として
 省エネルギーが推進された結果、建物が高気密化し、しかも換気量が減少したこ
 とが見逃せません。さらに、多くの合成有機化合物が多用されることが加わって、
 シックハウスに拍車をかけたと考えられます。

 汚染原因となる有機化合物としては、ホルムアルデヒドやラドンなどがよく知られて
 います。ホルムアルデヒドはビニールクロスや合板の接着剤に多く含まれており、
 ラドンはセメント板や石膏ボードなどから発生する物質です。どれも一般の家屋でも
 多く使われている素材ばかりです。

 つまり、シックハウスは対岸の火事ではありません。本来は体を休めるはずの家の
 中で、逆に健康が阻害されているという現象が、程度の差こそあれ頻発しているわ
 けです。しかも、まったく気づかずにいる場合すら多いのです。

 また、有害化学物質による疾病も問題化しています。これはアレルギー症状のよう
 に、ある化学物質に過剰反応するもので、『化学物質過敏症』と呼ばれています。
 さらに、特定の化学物質だけではなく、次第にさまざまな化学物質に反応する場合
 もあり、『多種類化学物質過敏症(MCS:Multiple Chemical Sensitivities)』と言われ
 ています。シックハウス症候群も化学物質過敏症の一種だと考えてもよいでしょう。

 但し、ここで注意しなければならないのは、シックハウス症候群を化学物質過敏症
 の範疇に加えることは構わないのですが、治療や対策については、両者を明確に
 分けて考えるべきだということです。

 シックハウス症候群では、たとえば室内が有害化学物質によって汚染され、頭痛や
 めまいなどの症状が出た場合、その場所を離れれば症状は改善されます。

 一方、化学物質過敏症では、その場所を離れても症状は改善されません。特定の
 化学物質が別の場所にごくわずかでもあれば、むしろ症状は悪化します。

 したがって、シックハウス症候群と化学物質過敏症とは似て非なるものだと考えな
 ければなりません。

 いずれにしても、シックハウス問題、特にその原因となる有害化学物質による健康
 阻害は、早急に対策をたてて解決しなければならない重要な問題なのです。


* 参考文献

  • 『化学物質過敏症 −ここまできた診断・治療・予防法−』
    石川 哲、宮田 幹夫 (著) かもがわ出版 1999年




 シックハウス問題に関する検討会の歩み


 さて、中間報告書について紹介する前に、この報告書がまとめられるまでのおおま
 かな流れを簡単に説明するために、検討会の歩みについて紹介します。

 シックハウス(室内空気汚染)問題に関する検討会は初会合を平成12年(2000年)
 4月5日に、第2回を同年4月27日に、第3回を同年6月26日に開催しました。

 そして、第3回会合において『中間報告書−第1回〜第3回のまとめ』をとりまとめ、
 同年6月29日に旧厚生省より報道発表されました。
 この中間報告書については、ここでは説明を割愛します。

 続いて、第4回会合が同年9月25日に、第5回が12月15日に開催されました。同じ
 ように第5回会合において『中間報告書−第4回〜第5回のまとめ』がとりまとめら
 れ、冒頭で触れた通り、同年12月22日に旧厚生省より報道発表されました。

 また、前後しますが、『中間報告書−第4回〜第5回のまとめ』をとりまとめるのに
 先立って、同年10月24日から11月24日までの一カ月間にわたり、『室内空気汚染
 にかかるガイドライン(案)に対する意見の募集』が行われました。

 これは、様式に準じ、電子メール、郵便、ファクシミリにて、検討会の事務局である
 旧厚生省生活衛生局企画課生活化学安全対策室宛に意見を送付するものです。

 当センターでも意見を提出しましたが、これは後で紹介します。

 以上が、次に紹介する『中間報告書−第4回〜第5回のまとめ』までの経緯です。




 『中間報告書−第4回〜第5回のまとめ』の主な内容


 
それでは早速、中間報告書について紹介しましょう。主な内容は次の通りです。

 ●以下は旧厚生省のWebサイト上で公開されている文書からの引用(転載)です。



 中間報告書の主な内容


 1. 個別の揮発性有機化合物(VOC)の指針値等について

(1)室内濃度に関する指針値の概要
(2)採取方法と測定方法について

 2. 総揮発性有機化合物(TVOC)の空気質指針値策定の考え方について

(1)室内空気質TVOC(暫定目標値)
(2)採取方法及び測定方法について

 3. 室内空気質指針値の適用範囲の在り方について

 4. 室内空気中化学物質に関する機器等目録について

 5. 測定・相談マニュアルの基本方針について

 6. 次回以降予定する本検討会の課題

(1)室内濃度指針値の新たな対象物質
(2)測定分析法に係る今後の課題
(3)シックハウス用語・略語集の整備
(4)空気質に関する情報開示と継続的なモニタリングのための体制



 問題の必須VOCsリストは、上記 2.総揮発性有機化合物(TVOC)の空気質指針
 値策定の考え方について の『別添3』に掲載されています。




 必須VOCsリスト


 中間報告書で述べられている『総揮発性有機化合物(TVOC)の空気質指針値策定
 の考え方について』はこの次で紹介することとして、先に『必須VOCsリスト』を紹介
 しましょう。必須VOCsリストに掲げられている有機化合物は次の通りです。

 ●以下は旧厚生省のWebサイト上で公開されている文書からの引用(転載)です。



 必須VOCsリスト


 
○芳香族炭化水素

ベンゼン、トルエン、エチルベンゼン、キシレン、n-プロピルベンゼン、
1,2,4-トリメチルベンゼン、1,3,5-トリメチルベンゼン、2-エチルトルエン、
スチレン、ナフタレン、4-フェニルシクロヘキセン

 ○脂肪族炭化水素(n-C6〜C16)

n-ヘキサン、n-ヘプタン、n-オクタン、n-ノナン、n-デカン、n-ウンデカン、
n-ドデカン、n-トリデカン、n-テトラデカン、n-ペンタデカン、n-ヘキサデカン、
2-メチルペンタン、3-メチルペンタン、1-オクテン、1-デセン

 ○環状アルカン

メチルシクロペンタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン

 ○テルペン

3-カレン、α-ピネン、β-ピネン、リモネン

 ○アルコール

2-プロパノール、1-ブタノール、2-エチル-1-ヘキサノール

 ○グリコール/グリコールエーテル

2-メトキシエタノール、2-エトキシエタノール、2-ブトキシエタノール、
1-メトキシ-2-プロパノール、2-ブトキシエトキシエタノール

 ○アルデヒド

ブタナール、ペンタナール、ヘキサナール、ノナナール、ベンズアルデヒド

 ○ケトン

メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、アセトフェノン

 ○ハロゲン化炭化水素

トリクロロエチレン、テトラクロロエチレン、1,1,1-トリクロロエタン、
1,4-ジクロロベンゼン

 ○酸

ヘキサン酸

 ○エステル

酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸イソプロピル、酢酸2-エトキシエチル、
テキサノールイソブチレート

 ○その他

2-ペンチルフラン、テトラヒドロフラン


 テルペンで挙げられているα-ピネンは、ほとんどの植物に多かれ少なかれ含まれ
 ている有機化合物です。リモネンは、オレンジや蜜柑に多く含まれています。
 そして、これらは天然物に由来する有機化合物です。上記リストのうち、天然有機
 化合物はテルペン類だけです。




 TVOCの空気質指針値策定の考え方

(中間報告書より抜粋)


 さて、それでは『総揮発性有機化合物(TVOC)の空気質指針値策定の考え方』に
 ついて中間報告書でどのように述べられているかを見てみましょう。必要部分のみ
 中間報告書より抜粋します。

 ●以下は旧厚生省のWebサイト上で公開されている文書からの引用(転載)です。



 毒性学的知見に基づいたTVOC指針値設定は現時点では困難ではあるが、現時
 点で得られる室内VOC実態等の調査結果を最大限活用し、合理的に達成可能な
 範囲で、空気質の状態の目安としての暫定目標値と暫定策定方法を提示すること
 は、室内空気質の状態を向上させ、居住者の健康を確保する上で、有効であると
 考えられると判断した。

 (1) 室内空気質TVOC(暫定目標値)

 室内空気質のTVOC暫定目標値を 400μg/m3 とする。この数値は、国内家屋の
 室内VOC実態調査の結果から、ある仮定(別添3.2参照)に基づいて、合理的に
 達成可能な限り低い範囲で決定した値であり、室内空気質の状態の目安として利
 用されることが期待される。TVOC暫定目標値は、毒性学的知見から決定したもの
 ではないことから、個別のVOC指針値とは独立に扱われなければならない。今後
 TVOCについては、実施される必要な調査研究によって、暫定目標値の妥当性の
 追跡とリスク評価に基づいた指針の策定が必要である。また発生源や換気に注意
 し、住宅の構造や日常の住まい方の改善によって、室内空気質の状態を向上させ
 る取組みが不可欠である。

 個別VOC指針値とTVOC暫定目標値について

 個別VOC指針値はリスク評価に基づいた健康指針値であり、その濃度以下であれ
 ば通常の場合そのVOCは健康への悪影響は起さないと推定された値である。しか
 しその濃度以下であればその空気質が快適で安全ということでは決してなく、実際
 には複数のVOCsが存在することから、他のVOCについても順次健康指針値を決
 めていかなければならない。しかしそれには多大な時間を有すること、またその間
 に指針値を決めていない有害物質による汚染の進行を未然に防ぐ目的から、VOC
 全体としての空気中濃度の目安を示して、個別VOC指針値を補足することが重要
 であると判断した。その際、TVOCとしてのリスク評価を行うにはデータが不足して
 いることから、国内における室内VOC濃度の実態調査の結果を用いて、合理的に
 達成可能な限り低い範囲において暫定目標値を決定した次第である。従って個別
 VOC指針値とTVOC暫定目標値は、現時点ではそれぞれ独立して扱われるべきも
 のである。将来リスク評価に基づくTVOC指針値が設定された場合には、個別VOC
 濃度とTVOC濃度の双方がそれぞれの指針値を満たしていないと、その空気質は
 安全であるとは言えない。従って、関係者においては、暫定目標値が将来指針値と
 して設定し直されたときのことを今から念頭におくと同時に、その間、暫定目標値を
 室内空気質の状態をモニタリングする際の目安とし、是非とも快適で安全な室内空
 間の確保を目指していっそうの努力をしていただきたい。

 測定結果の評価方法について

 この暫定目標値は、竣工後居住を開始してある程度時間が経過した状態における
 目安であって、竣工後入居してしばらくの間は、暫定目標値を超える場合も予測さ
 れる。
 またTVOCに含まれる物質の全てに健康影響が懸念される訳ではないこと、またそ
 の中には日常の居住環境で用いられる発生源に由来する物質が含まれることに
 留意すべきである。
 従って、測定されたTVOC値が暫定目標値を超える結果が得られた場合には、測
 定時期や、その中に含まれる物質の種類や由来を確認した上で、個々の良否の
 評価を行うべきである。例えば、天然材を用いた住宅のような場合は、特定の天然
 成分が高濃度で測定される可能性が高いことから、特別な配慮が必要であろう。
 この点は、本検討会中間報告書(2000年6月26日)において、背景因子の異なる
 個々の測定値と指針値との関係について更なる検討を進めることの重要性に言及
 している通りである。



 最初に『毒性学的知見に基づいたTVOC指針値設定は現時点では困難ではある』
 としています。
 また、『測定されたTVOC値が暫定目標値を超える結果が得られた場合には、測定
 時期や、その中に含まれる物質の種類や由来を確認した上で、個々の良否の評価
 を行うべきである』とし、『天然材を用いた住宅のような場合は、特定の天然成分が
 高濃度で測定される可能性が高いことから、特別な配慮が必要であろう』と述べら
 れています。
 これらは、必須VOCsリストに天然物由来のテルペン類が挙げられていることへの
 配慮だと考えられます。




 当センターが提出したガイドラインに対する意見


 さて、前述の通り、『中間報告書−第4回〜第5回のまとめ』をとりまとめるのに先
 立ち、検討会の事務局でもある旧厚生省生活衛生局企画課生活化学安全対策室
 では、平成12年(2000年)10月24日から11月24日までの一カ月間にわたり、『室内
 空気汚染にかかるガイドライン(案)に対する意見の募集』を行いました。

 当センターにおいても以下のような意見を提出しましたので、紹介しておきます。
 これが、必須VOCsリストにおけるテルペン類についての当センターの考え方でも
 あります。


 〔宛先〕

シックハウス問題に関する検討会事務局
(厚生省生活衛生局企画課生活化学安全対策室)

 〔意見〕

『総揮発性有機化合物(Total Volatile Organic Compounds:TVOC)の空気質
指針策定の考え方について』における『必須VOCsリスト』に関して

 意見内容

当該『必須VOCsリスト』に掲げられているテルペン類については、これを削除
するべきだと考え、強く要望します。

 理由

  1. テルペン類は植物由来の天然有機化合物であり、広く自然界に存在して
    います。当該リストでも天然物はテルペン類のみであります。

  2. 植物が生産し発散する揮発性有機化合物であるテルペン類にはさまざまな
    生物活性があり、その一つに人体への薬理効果が挙げられます。
    その代表例が森林浴です。1),2),3),4),5),6),7),8),9),10),11),12),13),14),15),16)

  3. 1998年には厚生省と林野庁とが共同で『健康保養の森』の選定及びかかる
    森林を活用した『健康保養プログラム』と『地域活性化方策』がまとめられて
    います。17),18)
    すなわち、テルペン類は健康増進に有用ではあっても健康を阻害するもので
    はありません。

  4. テルペン類が有する香りは自然感が強く、身近な自然において容易に接する
    ことができます。2000年6月28日に環境庁では『におい環境指針』を策定して
    おりますが、快適な環境を作るための香りとして、木や草花、風、茶畑などが
    挙げられています。19)
    植物の香りは快適環境に欠かせないものと考えられます。

  5. シックハウス問題においても、テルペン類によるホルムアルデヒド除去効果が
    実証されています。20),21)
    植物を利用した環境浄化や環境修復は今後ますます進められていくと考えら
    れます。かかる時代の要請を勘案すれば、有害化学物質吸着能に優れたテル
    ペン類が当該リストに掲載されることに矛盾を感じます。

  6. テルペン類には上記の他にも抗カビ性や抗ダニ性などの抗菌・防虫効果が
    認められ、多様な生物活性を有しています。22)
    利用方法によっては安全かつ有益なため、かかる特性を利用した技術開発も
    活発に行われ、多くの成果をあげています。23),24)
    テルペン類は、今後ますます期待されるものと考えられます。25),26)

 出典

1)フィトンチッドと森林浴 谷田貝 光克 林業科学技術振興所 1985

2)森林の不思議 谷田貝 光克 現代書林 1995

3)植物の不思議な力=フィトンチッド B.P.トーキン、神山 恵三
 講談社 (ブルーバックスB-424) 1980

4)森の不思議 神山 恵三 岩波書店 (岩波新書黄版242) 1983

5)森はレモンの香り 善本 知孝 文一総合出版 1990

6)森の香り 宮崎 良文 フレグランスジャーナル社 1996

7)森林からの発散物質とその効用 神山 恵三、高居 貴美、山中 芳樹、
 渡辺 一弘、勝山 輝男、島上 和則、田中 伸介、岩田 信英、田中 和子
 「環境科学」研究報告集(B104-R12-6) pp.49-58
 文部省環境科学特別研究 森林の環境調節作用研究班 1981

8)森林の医療効果−森林浴・その効用 吉永 徹夫
 林業技術 499  pp.7-10 日本林業技術協会 1983

9)フィトンチッドと森林浴 谷田貝 光克
 木材工業 39(1) pp.3-8 日本木材加工技術協会 1984

10)森林の生態と発散物質の作用 神山 恵三
 FRAGRANCE JOURNAL 65 pp.7-11 フレグランスジャーナル社 1984

11)住宅環境と木のにおい 谷田貝 光克
 木工機械 152 pp.5-9 全国木工機械工業会 1991

12)森林浴と健康増進−室内実験等による最近の知見 宮崎 良文
 山林 1284 pp.18-29 大日本山林会 1991

13)自律神経 森林浴の生理学的意義−ヒトの免疫能に及ぼす作用
 山岡 貞夫 aromatopia 1 pp.10-15 フレグランスジャーナル社 1992

14)森林が放出する揮発性成分とその効果 谷田貝 光克
 現代化学 269 pp.36-41 東京化学同人 1993

15)森林浴とリラクセーション 宮崎 良文
 aromatopia 6 pp.156-159 フレグランスジャーナル社 1994

16)森林浴効果を持つフィトンチッドの生理的効果 谷田貝 光克
 呼気生化学 pp.99-106 メディカルレビュー社 1998

17)森林資源活用による地域活性化方策調査報告書
 厚生省・林野庁(編・発行) 1998

18)健康保養の森における健康保養プログラム開発事業報告書
 厚生省保健医療局(編・発行) 1998

19)『街、香りで心地よく 環境庁が指針 木や草花、風、茶畑、神社のお香』
 日本経済新聞 2000年6月29日

20)木質系材料由来の揮発性有機化合物(VOC) 大平 辰朗
 木材工業 55(10) pp.444-450 日本木材加工技術協会 2000

21)植物を用いた環境浄化 大平 辰朗
 山林 1398 pp.17-26 大日本山林会 2000

22)ヒノキ科精油の抗菌作用と応用 谷田貝 光克
 aromatopia 9 pp.30-36 フレグランスジャーナル社 1994

23)樹木抽出成分利用技術研究成果集
 樹木抽出成分利用技術研究組合(編・発行) 1995

24)樹木生理機能性物質研究成果報告書
 樹木生理機能性物質技術研究組合(編・発行) 1999

25)やさしいフィトンチッドのはなし
 フィトンチッド普及センター(編・発行) 1997

26)フィトンチッドってなんだろう?
 フィトンチッド普及センター(編・発行) 2000

以上



 残念ながら、必須VOCsリストからテルペン類は削除されませんでしたが、提出した
 意見は参考にされたものと思われます。 




 意見に対する検討会事務局の見解


 当センターの意見に限らず、事務局では寄せられた意見のすべてについて見解を
 公表しています。

 事務局によれば、提出された意見数は31件で、ほとんどの意見書は複数項目に
 ついて意見が述べられているため、のべ意見数は142件となったとのことです。

 内訳を見ると、指針値全般に対するものが15件、個別物質に対するものが25件、
 TVOCに対するものが71件、指針値の適用範囲に対するものが19件、その他が
 12件となっています。

 さらに、テルペン類に関する意見は14件寄せられ、これは項目別意見数のなかで
 最大の意見数でした。意見内容は、当センターが提出した意見と同じで、リストから
 テルペン類を除外すべきというものです。

 これに対する検討会事務局の見解は次の通りです。

 ●以下は旧厚生省のWebサイト上で公開されている文書からの引用(転載)です。



 テルペン類の効用についてはご指摘の通りで、通常であれば、室内空気中に存在
 する濃度で人体に悪影響が及ぼすことは考えにくいと思います。しかし物質によっ
 ては医薬品に応用されるような強い活性を有するものもあることから、現時点で全
 てのテルペン類は人体への悪影響がないとは決して言えません。また、化学物質
 過敏症と呼ばれる症状で苦しんでいる方のなかには、ある物質に高濃度に又は長
 期間暴露したことがきっかけで、テルペン類を含む他の物質にも過敏になっている
 ケースがありえます。また他の化学物質とテルペン類との混合影響の知見もまだ
 十分に得られていないと思います。TVOC暫定値の設定において参照した、欧州委
 員会共同研究センター報告書のなかでは、TVOC決定手順の必須VOCリストにテ
 ルペン類が含まれています。
 またUS-EPAの室内空気質参照マニュアルにおいては、Contaminantとして、テル
 ペン類に分類されるVOCの測定値が紹介されています。テルペン類については今
 後のリスク評価において毒性上問題ないことがデータから明かであれば、TVOCを
 構成する物質群としてのテルペン類の寄与は、傾斜配分によって当然低くなるであ
 ろうし、これらの研究は、リスク評価に基づいたTVOC指針値設定を行うための今
 後の課題のひとつとして、報告書にも明記しているところです。なおその間、本検
 討会で扱う対象となる物質が全て、生活環境中に存在する濃度で人体に悪影響を
 及ぼす汚染物質であるとの誤解が生じないよう、報告書の記載内容を工夫致し
 ます。



 この見解をもとに、先に紹介したように、中間報告書には天然物に対する一定の
 配慮がなされたものと思われます。

 しかし、先に述べたように、シックハウス症候群と化学物質過敏症とは似て非なる
 ものであり、その対策は分けて考えるべきだと思います。

 また、天然物由来のテルペン類と合成された有害化学物質とを同じリストに載せる
 こと自体が、無用の誤解を招く原因にならないか懸念します。




 まとめ−『必須VOCsリスト』におけるテルペン類−


 以上が、シックハウス(室内空気汚染)問題に関する検討会における中間報告書
 ならびに『必須VOCsリスト』にテルペン類が挙げられた経緯です。

 一定の配慮がなされたとはいえ、テルペン類を有害化学物質と同列に置くことには
 やはり疑問が残ります。

 また、シックハウス症候群と化学物質過敏症とは明確に分けて対策を考えるべき
 だと思います。化学物質過敏症では、シックハウス症候群の原因物質以外の化学
 物質にも過剰反応する場合があり得る、と考えられるからです。

 もちろん、先に述べたように、フィトンチッドは万能ではありませんし、その功罪につ
 いては正しく認識すべきであることは言うまでもないことです。

 検討会第5回会合で某委員は次のように発言しています。

 ●以下は旧厚生省のWebサイト上で公開されている文書からの引用(転載)です。



 ここで言うのが適当かどうかわからないんですけれども、関連して私もコメントを申
 させていただきたいんですが、木材、特にTVOCの中から木材のα-ピネンとかを
 除けという話が大分14件もきているということなんですけれども、日本人は天然と言
 うと天然信仰というか、天然ならば何でもいいんだろうというような考え方がともする
 とありがちです。昔から使ってきた木だからなぜそれが今更いけないんだという考
 え方になるかもしれないんですけれども、そこは一つ皆さん見落としているんじゃな
 いか。あるいはわざわざわかっていて見落としている人もいるのかもしれないんで
 すけれども、日本は古来木材を使ってきたわけではあるんですが、日本の最近の
 住宅の気密性能というのは昔に比べると非常に上がっているわけでして、多分
 ○○先生のつくられたお宅も恐らく気密性能が相当いい家だったと思うんです。
 そういうところに今までの感覚でヒノキだのスギだの、全部総ヒノキ造りとか総スギ
 造りなどという家を造ったら、恐らくα-ピネンの濃度が相当上がるのはわかってお
 ります。このα-ピネンがやはりまずいというのは森林総合研究所の○○○先生な
 どの動物を使った実験で、森の辺でちょっとかぐぐらいにはいいものであったとして
 も、それが極端に上がればやはり健康上よくない、必要以上に濃度が高くなれば
 どんなにいいものであったとしてもよくない、ということはある程度わかっていること
 ですから、その辺のことも踏まえましてα-ピネンをこのTVOCの中から安易に削除
 するとか、これは別扱いだからいいんだとしていいかどうか。これは○○先生のよう
 な医学の関係の人たちの御意見を十分伺ってから決めるべきであるというふうに
 思います。

 ●これより以下の発言は割愛しました。また、固有名詞部分は○に変えました。



 低い濃度のフィトンチッドを浴びることが人体に有益なのであって、高濃度では逆に
 ストレスになることは事実です。コメントにもあるように、最近の住宅の高気密化を
 考えれば、木材の香りが室内に充満して高濃度になることも考えられます。この点
 は十分に注意しなければならないことだと思います。

 天然物信仰についても、情報発信側(当センターも含めて)の姿勢に改めるべき点
 が多いかもしれません。功罪について公平な立場で述べなければなりません。

 しかし、再三述べるように、テルペン類を有害化学物質と同列に置くことは無用の
 誤解を招きやすいと考えます。したがって、慎重な対応が必要ではないでしょうか。

 また、対策を考える際にシックハウス症候群と化学物質過敏症とは分けて論じる
 必要があるのではないでしょうか。

 以上をもって、『必須VOCsリスト』におけるテルペン類のまとめとします。




 『シックハウス問題に関する検討会』関係の情報


 このページでは、『必須VOCsリスト』におけるテルペン類に関係する部分のみを
 旧厚生省のWebサイトで公開されている資料から引用(転載)しました。

 さらに詳しくお知りになりたい方の利便性を考え、以下に引用(転載)元のURLと
 検討会関係の情報が公開されているURLとを紹介しますので、ご参考ください。

 但し、以下にはリンクを設定しておりません。旧厚生省は、現在『厚生労働省』と
 なっており、旧厚生省Webサイトも閉鎖される可能性もあるからです。
 (その際は、厚生労働省のWebサイトで情報検索をしてみてください。)


  • 中間報告書−第1回〜第3回のまとめ

http://www1.mhlw.go.jp/search/docj/houdou/1206/h0629-2_13.html

  • 中間報告書−第4回〜第5回のまとめ

http://www.mhlw.go.jp/search/mhlwj/mhw/houdou/1212/h1222-1_13.html

  • 室内空気汚染に係るガイドライン(案)に対する意見の募集結果について

http://www1.mhlw.go.jp/search/docj/other/topics/bosyuu/tp1215-2_13.html

  • シックハウス(室内空気汚染)問題に関する検討会 第1回議事録

http://www1.mhlw.go.jp/shingi/s0004/s0405-1_13.html

  • 第2回議事録 http://www1.mhlw.go.jp/shingi/s0004/txt/s0427-1_13.txt

  • 第3回議事録 http://www1.mhlw.go.jp/shingi/s0006/txt/s0626-1_13.txt

  • 第4回議事録 http://www1.mhlw.go.jp/shingi/s0009/txt/s0925-1_13.txt

  • 第5回議事録 http://www1.mhlw.go.jp/shingi/s0012/txt/s1215-1_13.txt


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