(連載1) 多様な働きをするフィトンチッド

谷田貝 光克



 森林の息吹に触れて身も心も健康にと森林浴構想が林野庁によって提唱され、
「森林浴」と言う言葉が造られて早や十数年。今やこの言葉は世の中に広く浸透し、
森林浴に出かける人も増えつつあります。

 歩きやすいハイキングコースが作られたり、休憩の場が作られたり、森林も森林浴
がしやすいように整備されてきています。

 若く元気な人たちばかりでなく、小さな子供もお年寄りも自分の体力に合わせ好み
に合わせて森林の良さを味わいながら健康なからだ作りができるのが森林浴です。

 静かな森の雰囲気、目にやさしい木々の緑、気分をやすらげる森の香りなど、森林
にはからだによい影響を及ぼすいくつかの要素があります。

 特に、木々が放出する揮発性物質である森の香りのからだへの働きについては
近年注目され、実証研究が積極的に行われてその働きが明らかにされています。

 ところで、森林浴という言葉と時期を同じくして、わが国にロシアから紹介された言
葉に「フィトンチッド」があります。

 フィトンチッドは植物が放出、あるいは分泌して、他の植物、時には自分に対しても
いろいろと働きかけるような化合物を指します。

 森林浴ではフィトンチッドがからだに触れて気分をやすらげ活力を与えてくれます。

 森林浴で私たちに触れるフィトンチッドは木々が放出する揮発性のフィトンチッドで
す。しかし、フィトンチッドは揮発性のものばかりではなく、においのない樹脂やアルカ
ロイドといったようなものも含み、多様な化合物を含んでいます。

 そして、古い時代から私たちの生活の中で利用してきたフィトンチッドも数多いので
す。例えば、香料、抗菌剤、殺虫剤、薬としての利用などです。

 フィトンチッドには森林浴で気分をやすらげ、快適にしてくれる快適性増進作用の
ほかに、抗菌・抗カビ作用、殺虫作用、昆虫誘引作用、植物成長促進・阻害作用、
抗酸化作用、薬理作用など、多様な働きがあります。そして、その化合物の種類も
多種多様です。


<<著者紹介>>


谷田貝 光克 (やたがい みつよし)

東京大学 大学院 農学生命科学研究科 農学国際専攻 教授


Copyright (C) 1999 Mitsuyoshi YATAGAI , Phyton-Cide Spread Center JAPAN

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