(連載3) 植物の不思議な世界 (2)

大平 辰朗



 前回の話しに関連して、興味ある話を一つ紹介しましょう。

 植物は自らの生活を守る為に、化学物質を利用して他の植物の侵略を防いでい
ました。今回は化学物質をお互いの情報交換に利用しているのではないかという
興味ある話題です。

 私達人間や動物は、言葉やしぐさなど何らかの手段で会話(コミュニケーション)
をし、情報を交換して生活を行っています。では、「植物の場合は?」と尋ねられて、
返答に困るのではないでしょうか。

 花の色や葉や花から発散されるニオイなどは昆虫等との間で交わされる様々な
シグナルではないかと言われています。では、隣の植物と会話をしたいとすれば、
あなたならどうしますか。最近の研究で、「その手段の一部では???」と考えら
れる仕組みが明らかにされています。

 毛虫の一種(テンマクケムシ)に食害されたヤナギの葉では、毛虫に食害された
ことに反応して、毛虫の成長をおさえる物質を葉に蓄えることが確認されています。
ところが、食害されたヤナギの近くにある害を受けていないヤナギでも、同じように
毛虫の成長を抑える物質を葉に蓄えていることが確認されたのです。食害された
ヤナギから近くの害をうけていないヤナギに対して、何等かのメッセージが届けら
れたのでは??との仮説のもと研究が行われ、ヤナギの葉などから発散される
揮発性の化学物質がその正体であると言われています。

 この報告はあたかも植物が化学物質を利用して会話をしているようで、植物の
情報交換の一手段ではないかと考えさせられます。他の植物、例えばポプラ、
ヨーロッパナラ、シラカンバ等でも同じ様な現象が報告され、その会話を担ってい
る化学物質が見出されています。現在これら以外の事例も数多く見出されており、
世界中で研究が行われています。

 近い将来、人間が植物の会話に参加できる時代がくるかもしれません。   


<<著者紹介>>


大平 辰朗 (おおひら たつろう)

農林水産省 林野庁 森林総合研究所 生物機能開発部 森林化学科

生物活性物質研究室 主任研究官


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