(連載4) 植物の不思議な世界 (3)

大平 辰朗



 植物は化学物質を利用して他の植物の侵略を防いだり、化学物質を介して近くの
植物と会話をしている事例を紹介してきました。

 今回は、植物と2種のダニの間で交わされる複雑な三角関係を紹介します。アムス
テルダム大学のサベリスと京都大学の高林純示らにより研究された事例です。

 リママメを食害するハダニに植物を主に餌とするナミハダニがあります。そのナミハ
ダニを主に餌とするチリカブリダニがあり、これらが登場人物です。リママメはナミハ
ダニに食害されては困ります。そこで、ナミハダニを何とか退治したいのですが、自ら
防御する術をもちません。そこで、考えたのが食害するナミハダニを餌とするチリカブ
リダニを誘引することでした。

 簡単に言えば、リママメがチリカブリダニをボディーガードとして雇ったのです。

 これらのストーリーを証明する結果が、前記の研究者らにより詳細な研究の過程で
得られています。食害されたリママメは、ある種の揮発性物質を発します。その物質
は研究の結果、βーオシメンとジメチルノナトリエンであることがわかっており、さらに
それらがボディーガード役のチリカブリダニを誘引することも確認されています。

 ところが、おもしろいことに未加害植物がこの揮発性物質にさらされた時、未加害
のリママメもチリカブリダニの誘引物質を通常のリママメより、明らかに多く生産して
いることが解明されたのです。未加害植物があたかも未然にボディーガードを求める
この現象は、外敵に対して交わされた植物間の会話の結果引き起こされたものであ
ると考えられ、ナミハダニとチリカブリダニ、リママメの3者で交わされるこのやりとり
は、実に巧妙な仕組みであり、知られざる植物の神秘の一端にふれた思いです。

 この様な現象は、他の植物からも続々と見出されており、それらの仕組みも解明さ
れてきています。

 将来的には、植物の知恵を利用した自然に優しい害虫防除技術の開発も可能で
はないでしょうか。


<<著者紹介>>


大平 辰朗 (おおひら たつろう)

農林水産省 林野庁 森林総合研究所 生物機能開発部 森林化学科

生物活性物質研究室 主任研究官


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